美術館や博物館を取材するテレビ番組などを見ていると、学芸員という人が説明するために出演しています。
学芸員というのは、職業なのかそれとも?

資格とか持ってる人のことじゃない?

考えたことなかった

どこの博物館にもいるの?
学芸員について、意外と知らないことが多かったので、調べてみました。
海外の学芸員事情もチェックしてみましょう。
学芸員とは?
学芸員とは、主に博物館・美術館・資料館などで資料の収集、保管、調査研究、展示、教育普及活動を行う専門職のことです。
🏛 学芸員の主な仕事
学芸員の仕事は幅広く、次のような業務を担います。
- 資料の収集・整理
- 新しい資料(美術品・文化財・標本など)の収集。
- 資料の保存・修復・管理。
- 調査・研究
- 所蔵資料や関連分野についての研究。
- 研究成果を論文や報告書として発表。
- 展示の企画・運営
- 展覧会や特別展示の企画・構成。
- 展示解説やキャプションの作成。
- 教育普及活動
- 学校連携プログラム、ワークショップ、講演会の開催。
- 来館者向けのガイドや解説。
🎓 学芸員になるには
日本では、文部科学省が定める「学芸員資格」を取得する必要があります。
主な取得ルート:
- 大学で「学芸員課程(指定科目)」を履修し、卒業する。
- もしくは、博物館などでの実務経験+文部科学大臣の認定。
学芸員資格は国家資格の一種(名称独占資格)で、
資格を持たない人は「学芸員」と名乗ることができません。

資格が必要なんですね
🧠 学芸員の種類(専門分野)
館の性格によって、専門分野も異なります。
- 美術系学芸員:絵画・彫刻などの美術作品を扱う
- 歴史系学芸員:歴史資料・考古遺物を扱う
- 自然系学芸員:動植物・地質標本などを扱う
- 民俗系学芸員:生活文化・民俗資料を扱う

その道に詳しい人がなるんだね
学芸員は海外にもいるのか
学芸員という専門職は、日本独自の資格を保有する人のことを指すので、厳密にいえば海外には学芸員は存在しないことになります。
英語では一般的に curator(キュレーター) と呼ばれます。
「学芸員(がくげいいん)」と「キュレーター(curator)」は似た意味で使われますが、制度上・文化的背景が異なります。以下で分かりやすく整理しますね。
🏛 学芸員とキュレーターの違い
| 項目 | 学芸員(日本) | キュレーター(欧米など) |
|---|---|---|
| 言葉の起源 | 日本独自の資格名(法的用語) | 英語圏由来の職名(curator=「世話をする人」) |
| 法的地位 | 文部科学省による国家資格(博物館法) | 資格制度はなく、職能としての呼称 |
| 主な職場 | 博物館・美術館・資料館・動物園・植物園など | 美術館・ギャラリー・大学・企業・オンラインメディアなど |
| 役割の重点 | 資料の「保存・研究・教育」 | 作品や情報の「企画・編集・発信」 |
| 求められる資質 | 専門的知識・研究力・教育力 | 芸術的センス・企画力・ネットワーク構築力 |
| 資格の有無 | 学芸員資格が必要(名称独占) | 特定資格は不要。経験・実績重視 |
| 社会的背景 | 博物館法(1951年)に基づく公的制度 | 美術館やアートシーンの発展とともに自然発生的に成立 |
🎨 イメージでいうと…
- 学芸員:
→「博物館の先生」
資料を正しく扱い、研究・保存・教育普及を通じて文化を継承する。 - キュレーター:
→「展覧会のプロデューサー」
アートや情報を選び、社会や観客に新しい意味や体験を提案する。
💡 現代では境界が曖昧に
最近では、日本の美術館でも「キュレーター」という言葉を使うことが増えています。
たとえば、現代アートやデザインの分野では、「学芸員(curator)」が展覧会を企画・編集する役割を担うため、実質的に両者の仕事が重なります。
🔁 まとめると
- 学芸員=制度的・学術的な職種(日本の博物館法に基づく)
- キュレーター=企画的・創造的な職種(国際的・芸術的な概念)
学芸員は公務員扱いなのか
学芸員は公立の美術館や博物館で勤務することが多いため、何となく公務員なのでは?というイメージを持たれている方もいるのでは。

そう思ってた!!
学芸員は「必ずしも公務員ではない」けれど、公務員として働く場合が多い です。
説明しますね。
🏛 学芸員が「公務員」になる場合
多くの公立の博物館・美術館・資料館(市立・県立・国立など)では、
学芸員は地方公務員または国家公務員として採用されます。
例:
| 館の種類 | 身分 |
|---|---|
| 国立博物館(東京国立博物館など) | 国家公務員(文化庁系) |
| 県立・市立博物館・美術館 | 地方公務員(都道府県・市町村職員) |
公務員試験に合格し、学芸員資格を持っていることが条件になることが多いです。
採用後は「○○市立博物館 学芸員」として勤務します。
🏢 学芸員が「民間職員」になる場合
一方、私立の美術館・大学博物館・企業系ミュージアム・NPOなどでは、
公務員ではなく民間の職員として雇用されます。
例:
- サントリー美術館、ポーラ美術館など(私立)
- 大学附属博物館(大学職員)
- 企業ミュージアム(メーカーの広報・文化部門)
- NPOや地域文化団体の学芸員
この場合は給与や勤務形態も一般企業と同じで、
研究・展示活動に自由度が高い傾向があります。
💡 まとめ
| 分類 | 身分 | 主な勤務先 |
|---|---|---|
| 公務員学芸員 | 国家・地方公務員 | 国立・県立・市立博物館、美術館 |
| 民間学芸員 | 私企業・大学職員・NPO職員 | 私立美術館、大学博物館、企業ミュージアムなど |
📘 つまり:
- 「学芸員」は職業の種類(専門職名)。
- 「公務員」は雇用形態(身分)。
→ 両方を兼ねる人も多い、ということです。
まとめ
学芸員は専門的な知識を必要とするので、その道のことを長年勉強した人には最適な職業と言えるのでしょう。
ただ、好きなことを職業にしてしまうと、ただ好きというだけではなくなってしまうケースもあるので、そこは複雑なのかも知れませんね。

