和食のお店や居酒屋などでは、注文した料理が出てくる前に、「お通し」と呼ばれるものが提供されることがあります。
小さな器に盛りつけられた料理は、飲み物と一緒に注文した料理が運ばれるまでのつまみとして楽しめます。
「お通し」のほかにも「つき出し」と呼ぶ地域もあります。
関東では「お通し」、関西では「つき出し」と分かれているようですが、はっきりと東西で境界が分かれてはいません。
また、「お通し」と「つき出し」はそもそも意味が違うという説もあります。
どちらも共通しているのが、注文していないのに出されるので、断れないという点です。
お通しもつき出しも、注文しているわけじゃないのに出てくるから、断るのは難しいよね
でも、嫌いなものが出てくることもあるよ
うん、それで残すなら断りたい
そう思っている人も少なくないようです。
ただし、もしも断ったり、手を付けずに返したとしても料金が割引になるわけでもないのは不思議ですよね。
「お通し」の料金は
「お通し」は、注文していないのに出されるので、無料だと思っている人もいます。
ですが、一般的に「お通し」は席料に含むサービスとして提供されるので、無料というわけではありません。
お店によって値段設定は違いますが、300円~500円くらいです。
高級なお店では、もっと高い席料ですから、無料で提供してくれるサービス料理というわけではないのですね。
和食を提供するお店では「お通し」ですが、BARやクラブなどでは「チャージ料」です。
「お通し」の語源
「お通し」の語源と言われるのは2つの説があります。
1つは、お客の注文を承り、厨房に通すことが由来という説です。
もう1つは、来店したお客様を席にお通しした後に出すものだからという説です。
どちらが正解なのかはっきりしていませんが、有力なのは前者の方です。
「お通し」を断ることは可能なのか
自分が選んで注文するわけじゃないのに勝手に出されるのがお通しなので、苦手なものや食べられないものが出ることもあります。
あらかじめ好みを伝えて予約しているわけじゃなければ、お通しにお客の好みが反映されることはありませんよね。
一般的には、苦手なものがお通しに出されても、そのまま手を付けずに残す人がほとんどです。
「これ、苦手なので下げてください」という人は滅多にいません。
ですが、もしもホントに食べられないものが出された場合は、それを伝えれば変えてもらえることもあります。
無料で提供されるサービスだと思っている人は、苦手でも交換して欲しいなんて言えないですよね。
ですが、席料として支払うのであれば、食べられるものに変えてもらっても構わないと思います。
私の記憶では、お通しを何度か変えてもらったことがあります。
「食べられないので変えてください」と頼んだわけじゃありません。
「ごめんなさい。食べられないので下げてください」とお願いしたら、「○○はお好きですか」とこちらの好みを聞いてくれて、変えてもらったことがあるのです。
お店側のご厚意だったと思うので、どこでも交換可能というわけじゃないでしょうが、手を付けずに捨てられてしまうのは勿体ないですよね。
変えてくれそうにないお店なら、同席した人に食べてもらった方が良いでしょう。
「お通し」を断ると割引されるのか
お通しは自分が好きなものを頼めるわけじゃないのに、料金を請求されるのが納得できないという人もいます。
不思議な制度だと思っていて、
もしかしたら断ればお通しの料金は発生しないのかも?
と考えたことがある人もいると思います。
ですが、原則として席料に含まれるサービスというのがお通しなので、断ったからと言って席料が無料になったり、割引されることはありません。
席料というのは、スペースの使用料のことです。
飲食店の中でも、アルコールを提供するようなジャンルのお店では、お店での滞在時間が長くなる傾向があります。
その間にスタッフはサービスを続けます。
そのような滞在時間が長くなるジャンルの飲食店では、席料が料金にセットされているのです。
ラーメン店や牛丼チェーン、そばやうどん店などには席料がないのは、滞在時間が短くて、どんどん回転するからでしょう。
お酒を提供するお店でも、1、2品をササッと食べてお店を出る人もいるので、そういう人にとっては、ちょっと納得できないかも知れません。
ですが、日本の飲食店文化として定着してしまったので、今さら変わらないのではないでしょうか。
「お通し」と「つき出し」の違い
関東では「お通し」、関西では「つき出し」と分かれるというのが一般的な説なのですが、私自信の経験ではそうとも言えないと思っています。
たとえば関東圏でも、席料を請求しない居酒屋チェーンなどでは、「つき出し」として無料で提供される小鉢などの一品料理があります。
そもそも「つき出し」の語源は、頼んでいないのにつき出すことだと言われているので、席料の有無に関係なく、お店側のサービスとして出されることもあるのです。
「お通し」と「つき出し」の違いとして、有料対無料というわけじゃないのが、ややこしさを増す原因になっているのですが、元々が明確な決まりがあるものじゃないので、お店ごとに違うのは仕方ないのです。
「先付け」とは別のもの
「お通し」と「つき出し」のほかに、もう1つ「先付け」というのがあります。
ただの呼び名の違いだと勘違いしそうですが、「先付け」に関して言えば「お通し」や「つき出し」とは明確に違います。
「先付け」とはコース料理の一品に含まれるので、注文した料理ということになります。
まとめ
「お通し」とは、席料を取るお店側からのせめてものお返しという意味でもあるので、心遣いとして受けるのがマナーなのでしょう。
納得できない文化だと思うかも知れませんが、海外にもテーブルサービスをするスタッフにはチップを渡す文化があります。
日本では、チップを渡す習慣がないので、その代わりだと考えれば、少しは納得できるのではないでしょうか。